2014年12月26日

横浜市の自立支援をめざす小規模多機能型居宅介護の【シェルパ】|ホームページリニューアルしました。

株式会社シェルパは、横浜市を中心に小規模多機能型居宅介護、デイサービス、福祉用具レンタルサービスなど介護・福祉・医療事業を通じ、安心・信頼できる環境を提供しております。

2014年12月 8日

第10回 「夜間の本音」

「どうして?」「なんで?」これがAさん(女性)の口癖。
日中のAさんとの会話に、この口癖はつきもの。
昼食を食べることも、「なんで?」
水分を摂ることも、「どうして?」
トイレに行くときも、「トイレ行くからね」と不安な声の訴え。
何かと不安が多く、か細い声で寄り添うスタッフにしがみ付くのも特徴。
そんな何かと不安で、時にネガティブな発言をされるAさんの姿は、どことなく自分と重なる気がしていま
した。
しかし、夜勤業務をする僕はAさんと夜間も一緒になることがあります。
午後9時、夕飯も食べ終わり、泊まりのご利用者さんが床につき始めた頃。
Aさんがベッドから「お兄さーん」と呼びました。
「今日の夜食は何食べたの?」と聞いてきたため、『僕はカップラーメンですよ』と答えると、
「カップラーメン(笑)」と笑いながら応えました
他にも、日中の出来事の話や、時にはご自身の息子さんの話を自慢げに話されました。
他のご利用者さんのことも気にかけつつ、僕はベッドサイドの横に座り込み、Aさんから出る世
間体の会話をしばらく続けました
実はこのとき、昼間に見られる不安気な表情を見ることは無いし、あの口癖を一度も耳にすることはありま
せん。
むしろ、別人かのようにAさんの表情は、とても生き生きとしていました。
また、僕が冗談で『どのスタッフが一番好き?』と少しふざけた質問をすると、
「お兄さん」と笑いながら僕のことを指さしました。
『もっと良い人たくさんいますよ?』と尋ねると、「優しいから(笑)」と笑顔で応えました。
「女性はお姉さん」と看護師の席を指さして言いました。
「あとは、メガネの人が2番目で、背の高い人が3番目で...」と自分から、どんどん話し始めま
した。
そんなAさんとは、なぜだか夜間だからこそ本音で語れ、そして本当のAさんの姿を見ることができるよう
に感じました。
また、どこか自分と似ているAさんの言動や行動に共感するようにもなっていました。
しかし、朝になると再び一変し、いつもの口癖と不安気な表情が始まります。
何が正解かは分からないけど、きっととても寂しがり屋で、1人でいるのが怖いだけなのではないかと思い
ました。
確かに、日中は大勢の人がいるけれど、夜間のように静かにゆっくりした時間が流れているわけではありま
せん。
Aさんと同じネガティブな僕だけれど、これからも夜間の静かな時間に、Aさんの話をたくさん聞きたいと
思います。
例えば、好きなテレビ、好きな食べ物など、もっともっと本当のAさんの事を知っていきたいです。

2014年11月11日

第9回 「朝一の表情は必見!」

朝8時半、今日もぼやあ樹へ出勤する時間。

出勤して必ず始めにやることは、ご利用者さんの朝一の顔を見ることです。

笑っている方、怒っている方、少し寝ぼけている方など、様々な表情が出現しています。

ご利用者さんの表情を見ると、職場に来た実感がすると同時に、"今日も1日が始まる"という

スイッチが入ります。

中でもAさん(女性)は、重度の認知症で普段は会話が噛みあわない方。

他にも、突然かぼちゃが綺麗な白髪頭に乗っていたり、お茶にティッシュが入っていたりなど、認知症に伴う様々な症状が見られます。

ある日、Aさんの朝一の表情は、とてもぼんやりしていて眠たそうな表情をしていました。

お昼ご飯の前にベッドで横になっていたAさんをお部屋までお迎えにいった時のことです。


宮「Aさん、お昼ご飯の時間ですよ。」と声をかけると、ベッドの柵から手を差し伸べて

A『私のこと好き?』と、当然問いかけてきました。

宮「もちろん好きですよ」

A『うそ~思ってないでしょ~?(笑)』

宮『うそじゃないです。大好きですよ』

しかし、Aさんはどこか疑うように、少し不満げな表情をされました。

そこで、たまたま部屋の前を通りかかった他のスタッフにも聞いてみるよう伝えると、

他『私も他のみんなも、Aさんの事大好きですよ』と、Aさんに向かって声をかけました。

すると、『ありがとう(^o^)』と、とても満足げににんまりと嬉しそうな顔をほころばせました。

正直、突然Aさんからこの質問をされた時は不思議な思いでした。

おそらく目が覚めて、暗い部屋の中一人寂しい思いになったのではないか、また普段の関わり

で物足りなさを感じてしまったのかなど、色々と考えさせられました。

しかし、時折このようにAさんと会話が噛みあうと、もちろん嬉しさはあるものの、一方通行にならないやりとりにとても楽しさを感じます。

こんなたった5分間程のやりとりではありますが、これが私の元気の源であり、 "今日も1日頑張れる!"そんな思いになれます。

また明日の朝一の表情を見るのが楽しみです♪

2014年10月 4日

第8回「覚えづらくてすみません(笑)」

弱視のAさん(女性)は、歩行時や入浴時などの際に必ず介助が必要な方です。

Aさんへの第一印象は、目は見えづらい方だけど、"とても明るい人柄で素敵な笑顔を見
せてくださる方"でした。

そんなAさんは、週2回のデイサービスを利用され、私は週3回の勤務なこともあり、
Aさんと私は週に一度しか顔を合わせることができません。

それに、私は半日勤務のパートなため一緒の時間を過ごせるのは午前中のみです。

そんな貴重な時間は、毎週入浴介助でご一緒するのが日課です。

ある時「Aさん、お風呂の用意ができましたがいかがですか?」と声をかけると、
『あら、お願いします』と笑顔で応えられました。

そして、入浴介助を始めると、

A『あのう、お名前聞いてもいいですか?』

新「新谷と申します。宜しくお願いします」

A『あっそうだ!ごめんなさいね。覚えられなくて...』

新「大丈夫ですよ。むしろ覚えづらい名前ですみません」

介助中の女性二人の楽しい会話はもちろんのこと、神奈川では珍しい且つ、覚えづらい私
の苗字の話題は、毎週の日課となっていました。

そんな会話が3週間ほど続いた翌週、いつもと違う心境で介助を行なうこととなりました。

いつものように「Aさん、お風呂の準備ができましたよ」とAさんに声をかけると、
『新谷さんよね。宜しくお願いします』と返答されました。

正直、内心驚きと嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

「覚えてくださりありがとうございます!」と視覚では伝わらない笑顔で返答しました。

そして今まで入浴後には『ありがとうございます』と一言だけだったのに、この日は『新
谷さん、ありがとうございました』と、持ち前の素敵な笑顔でお言葉を頂きました。

名前を呼んでくださったこと、そして何より覚えづらい私の名前を覚えようとしてくれた
ことがとても嬉しかったです。

また、ご利用者さんに初めて名前を正確に呼んで頂けて本当に嬉しい限りです。

覚えてもらえたのは、毎週私が担当していて、声や素振りを感じて下さったのか正確な理
由は分からないけれど、来週以降も名前を覚えてくれてたらいいな...そう思います♪

2014年8月 8日

第7回 「レクリエーションの勉強中」

八〇代のAさん(女性)は今日も元気良く「おはよう!」と笑顔で言いながらぼやあ樹にいらっしゃいました。

お話好きでいつも明るいAさんは、ぼやあ樹のムードメーカーです。

そんなAさんは、昔からビーズ細工などの裁縫や細かい折り紙が大の得意です。

昔は着物の制作から着付けまで手がけるなど、とにかく手先は器用な方でその力はぼやあ樹でのレクリエーションでも常に発揮されています。

私とAさんが出会ったのは約3ヶ月前。

そして同じ時期に私はレクリエーションの担当者に任命されました。

もともと人見知りで緊張体質な私は、正直なところ当時は不安でいっぱいでした。

"何をやったらいいのか分からない" "誰が何を好きで何ができるのか分からない"とこんな思いを常に抱え込んでいました。

しかし、そんな私を緊張から解してくださるのが、Aさんを始めご利用者の皆様でした。

ある日、一つのテーブルでご利用者さん数名と折り紙を折っていた時、Aさんが私に話しかけてくださいました。

『ねぇねぇ、今度私の家にある作品を持ってきて教えてあげる』と言って、翌日にとても素敵な折り紙で作った鞠の作品を持ってきてくださいました。

その日はAさんに作り方を教えて頂きながら、ご利用者さん・スタッフ一丸となって素敵な鞠を完成させ、早速みんなが集まるフロアに飾りました。

時には、同じテーブルで折り方に困っている方がいたら、「そこはこうやったらできるよ」と、Aさんからアドバイスをしてくださる一面もみられました。

また、Aさんから「塗り絵やろうよ♪」「ボールのゲームしようよ♪」などと、"あれがやりたい"と提案して頂くことが多く、まだレクリエーション担当者として経験の浅い私にとっては、いつも助けて頂いています。

約半年がたった今でも人前で緊張はしますが、様々なレクリエーションを通して、より間近でご利用者さんの新たな発見をできることは、この担当の楽しみでもあります。

また、一つ一つの活動後にご利用者さんから頂ける『ありがとう』という言葉は、私にとって嬉しく、やりがいを感じることができます。

これからもどんどん経験を積みながら、ご利用者さんと少しでも多く、楽しい時間を過ごせるよう日々勉強しながら頑張っていきたいと思います。

2014年7月14日

第6回 「ハーレム」

今日もぼやあ樹では、女性の甲高い元気な声で賑わっています。

今流行の『女子会』と言われているものが、ここぼやあ樹でも開催されています。

女性のご利用者・スタッフが大半を占めているため、男性スタッフの私は恋愛やファッションといった女性の話題に、正直ついていけない時もあります。(笑)

Aさん(女性)と初めてお会いしたのは今から約5ヶ月前。

五十代後半のAさんは、以前の施設でも男性の介助を拒否するほど、女性らしく恥かしがり屋な性格です。

また、Aさんは失語症を患っているため、中々ご自分からスタッフへ話しかけることもありませんでした。

出会った当時は緊張していてお互いにお互いを探りあい、信頼関係を築くまで時間がかかりました。

そんなある時、Aさんと女性スタッフがこんな話題で盛り上っていました。

二人の目には、私ともう一人の男性スタッフが一名写っていたときのことです。

スタッフ「Aさん、あそこにいる男性スタッフかっこいいと思います?(笑)」

Aさん 『あの人はタイプじゃないわ』

スタッフ「それじゃあっち(私)にいるスタッフは?」

Aさん 『ああ!あの人は大好きよ』

この会話を少し遅れて聞いた私は、素直に嬉しくなり「ありがとうございます。」と照れながら応えました。

きっとこの時の私の表情といったらデレデレしていたに違いありません。(笑)

また、Aさんは時々お泊りサービスをご利用になることがあります。

夕方以降はご利用者・スタッフの人数も少なくなり、日中に比べ時間の流れがゆっくりに感じます。

夜勤の時間帯には二人でソファに並んでテレビを見ることが日課です。

日中に比べて時間にとらわれない夜は、言葉が出づらいAさんとゆっくり会話をすることができる貴重な時間でもあります。

Aさんも日中に比べて一生懸命"話そう"という意欲が高く、Aさんの方から積極的に話しかけて下さいます。

すると、「あなたは楽しくていい人ね」と私に一言話かけて下さいました。

こんな貴重な一言を言って頂けた時は、とてもとても嬉しい気持ちになります。

現在は当時と変わらず、お風呂介助は男性スタッフを拒否されますが、こんな私でもAさんのお役に立てることはとても光栄です。

こんな素敵なお仕事をさせて頂けていること。

こんなまるでハーレムの中でお仕事をさせて頂けること。(笑)

とても幸せを感じながら、現在もそしてこれからも頑張っていこうと思います!

2014年6月 2日

第5回 「そうだ!高○屋へ行こう!」

今から数年前、デイサービスぼやあ樹にいらしたAさん(女性)。

それは、「自宅で倒れて病院へ入院。退院後、施設に入所させようと思ったのですが、

とても拒否が強くて...」と、ご家族からの相談がきっかけでした。

拒否が強いと聞いていたので、初回はスタッフも緊張気味で、多少の覚悟が必要でした。

お迎えに行くと、下着一丁で寝ていたAさん。

準備に時間は掛かったものの、外に出かけることに対しては何の抵抗もありませんでした。

その理由は後々気付かされます。

初回利用が、人数少なめの日曜日だったこともあり、Aさんにとってはゆったりと過ごせ、

気に入って下さった様子でした。

慣れてきた頃には、「このリュック一つで世界中を飛び回ったんだよ。もう悔いは無い」

「女性の先頭に立って、女性の賃金を上げろ!って戦ったんだ。それが叶った頃には自分は定年。後輩たちのために戦ったようなもの。

辞める時には後輩たちが泣いてくれてねぇ...。」などと、スタッフに誇らしげなお話をいつも聞かせてくださるようになりました。

Aさんは、キャリアウーマンで格好良い生き方をなさった方です。

そんなAさんには現在進行形の『生きがい』があります。

それはご自分の足で横浜の"高○屋"へ行くこと。

今思えば、それが施設への入所を拒否した理由だったのでは...。

一時期は、体力が落ちて高○屋へ行けなかった時もありましたが、ぼやあ樹の利用を増やし、水分もたくさん摂っていることで、再び元気を取り戻しました。

現在では、「そうだ!高○屋へ行くわ」と言って生き生きと向かうことが出来ています。

誇りである有名な某S建設の制服を着て♪

ちなみに私にとっての生きがいは、人に喜んでもらったり、笑顔になってもらうことです。

Aさんのように生涯『生きがい』を持ち続け、格好良く堂々とした強い姿は、同じ女性として尊敬しています。

"何か一つでも楽しみがあれば、生きがいへとつながる"

それが元気でいられる秘訣なのではないかなと、Aさんの姿を見て強く強く感じています。

これからもそのとっておきの楽しみ=『生きがい』を大切にしたいですね!

2014年5月 3日

第4回 「幸せな30分間ドライブ」

午後3時半。今日も利用者さん全員でおやつを召し上がっている時間。

利用者さんが楽しそうに召し上がっている中、Aさん(男性)だけは他の利用者さんより少し早くご自宅へ帰られる。

「Aさん、お帰りの時間ですよ」と声をかけると、

『よよよ!?』と独特な効果音で反応なさる。

実はAさんのこの独特な反応が私は大好き。

驚いたときには『よよよ!?』『あら~』『おややや!?』などリアクションが抜群!

そして、これからAさんと私の30分間のドライブの始まり。

運転席に私がいて、Aさんは後方座席の中央が特等席。

すると、『昔は男しか免許をとらなかったのに、あんたは女のくせに上手いね』と後ろから褒めてくれる。

道を曲がるときには『はい、左に曲がりまーす』、

赤信号で停止をするときには『はい、止まりまーす』、

バックをするときには『はい、後ろオーライオーライ』と声をかけてくれる。

私も思わず「右曲がりますよ~」「止まりましたね」と復唱してしまうほど。

昔トラックの運転手だったAさんは、運転にはとても慎重で色々と気にかけてくれる。

このかけ声はAさんの自宅に着くまで、ラジオがいらないくらいずっと話し続ける。

ぼやあ樹にいる時間は、こんなにもAさんから話す場面は見られないが、車に乗った途端に男の血が騒ぐかのようにじっと私の運転を気にかけてくださる。

たまに、『およよ、ちょっとギリギリで怖いよ(笑)』とご指導いただくことも(笑)

そして無事にご自宅へ到着し、Aさんのご家族にお会いすると、

『いつもぼやあ樹の皆さんの写真が載った年賀状を見ながら、金子さんを指差して"大好き"と言ってますよ』と言って頂いた。

なんだかとっても照れくさかったが、顔を覚えてもらえて、ほっこりした気持ちになった。

今度は直接ご本人から聞けたら嬉しいな(笑)

そんな気持ちのまま、私とAさんの幸せな30分間ドライブが今日も終了した。

私にとってこの30分間はとても楽しくて、疲れを吹き飛ばしてくれる癒しの時間。

ぼやあ樹に帰るまでの1人ドライブは少し寂しいけど、またこの30分間を楽しみに今日も安全運転で戻ります♪

2014年4月 2日

第3回 「ありがとうね」

『ありがとうね』

これがAさんからいつも聞く言葉であり、一生心に残る言葉です。

Aさんは、多少の認知症を患う女性利用者さんで、ぼやあ樹ではもう約2年のお付き合いになります。

性格はとても温厚で、車椅子から椅子へ移乗するときや排泄介助をする際に、『ありがとうね』『皆さんが良くしてくれるから嬉しい』と、スタッフを気にかけて下さる方でした。

ある時には、『あなたは背が高いから着物着たら見せてね。』と声をかけて下さったり、『これあなたに似合いそうよ』とご自身のアクセサリーを私の体にあててみたりなど、女性らしいしぐさや発言をなさる品のある素敵な方でした。

そして、お正月にはご家族と外出され、その日は少しお疲れの様子ながらも、穏やかな表情でぼやあ樹に戻られました。

しかし、Aさんはお正月を迎えた頃から、食欲が低下し、以前は朝昼晩と完食されていたのに対して、当時は半分程度しか召し上がりませんでした。

それでも、介助をした際には相変わらず『ありがとうね』と声をかけて下さいました。

そんなある日、勤務を終えた私は普段どおりにご利用者さんやスタッフ、もちろんAさんにも「お疲れ様です、お先に失礼します」と声をかけて帰宅しました。

夜になっていつも通り横になっていると、夜中の3時頃にふと目が覚めました。

いつもなら目が覚めない時間だけに、その後もなかなか寝付けず、気づけば出勤時間になっていました。

出勤してからまもなく一本の電話を受け、Aさんがお亡くなりになったと聞かされました。

あまりの早さに驚き唖然となりながら、いつまでも悲しみが止まりませんでした。

そして、Aさんが亡くなった時間が夜中の3時半ごろと知り、私は同じ夜中の3時に目が覚めたのは、Aさんからの最後のメッセージだったのではないかと感じました。

もしそうであったとして、もしできるものならば、最後にメッセージを送ってくれたAさんへ私から"ありがとうね"と直接お伝えしたいです。

他にも、今思えば"もっとAさんと話をすれば良かった"と後悔しています。

耳が遠いAさんは、話しかけても「私は聞こえないから」と会話を遠慮することが多かったからです。

でもだからこそ、数え切れないAさんとの思い出を大切にしていきたいと思います。

そして、私もAさんのような優しく、人への感謝の気持ちを忘れない素敵な女性になれるよう、日頃から接している方、またお世話になった方への恩を忘れず過ごしていきたいと思います。

2014年3月 8日

第2回 「ニコニコバカヤロー」

「なにすんだー」「バカヤロー」
また今日もいつものようにAさん(女性)から聞こえてくるこのセリフ。
なるべく声を掛けてから対応して、不愉快な思いにさせないように配慮していますが、ベッドから起き上がる時、スタッフに体を触られてびっくりしているのかもしれません。
『Aさん、もう終わりますよ』『痛くないですよ』と声を掛けると落ち着いた表情になり、お互いに一安心。
認知症を患い、時々こういった怒り口調をするAさんだが、ドキッとさせられるような一面もお持ちです。
Aさんとお茶を飲みながらゆったりと会話をしていた時のこと。
笑顔でAさんへ微笑みかけると、突然片手を私の頬に当て、「可愛い顔して~」と一言。
まるで、お祖母ちゃんが孫に話しかけるかのような、優しいほんわかとした表情でした。
その言葉にあまりに驚いて、その時は上手く答えることができませんでしたが、心の中は驚きつつも嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
私は、笑顔で応対すればいつもこんな落ち落ち着いた気持ちになってもらえるのではないかと思い、別の日にもAさんに向かって笑顔で微笑みかけてみました。
すると、なんと今度はなぜかニコニコした表情で「バカヤロー♪」という返答が返ってきました。
以前のようにまた頬を触って、あのほんわかした表情が見られるかと思っていたのですが、今回はまた違った意外な表情に出会うこととなって、またびっくりさせられました。
もともと、Aさんからバカヤローと言われるのは、決して嫌な訳ではなく、むしろ『また言われちゃった』といった感じで、可愛らしさすら感じます。
なぜこのような言葉が出るのか不思議に思い、ご家族に伺ったところ"以前はもともとそんな言葉を使う人じゃなかった"とのこと。とても不思議な現象です。
子供が出演しているテレビを見ると、にっこりと笑う様子がたくさん見られる様子からも、昔はとても気の良いお母さんだったことが良く分かります。
"笑顔で話しかければ、また「可愛い顔して~」と笑顔が返ってくる"なんて、そう簡単にはいかないけれど、笑顔を心掛けていれば相手も心穏やかに過ごしてくれるのだろうな、ということをAさんから学びました。
ひょっとしたら、また新たなAさんの一面が見られるかもしれないですね(笑)
今後も笑顔でチャレンジを続けます!

2014年2月18日

第1回 「私にとっての恩人」

入社当時、初めてAさんに出会った日、先輩のスタッフからの一言。

「Aさんは認知症だし、耳も遠いから話しかけてもあんまり反応がないからコミュニケーションがとれないの」と言われた。

...「(本当にそうなのかなぁ~?)」

それから何度もAさんの様子を見るも、1人でトイレも行き、ご飯もしっかり食べるが、確かに1日誰とも会話をしていなかった。

それから半年が立ち、ぼやあ樹では【自立支援プログラム】を導入した。

認知症状の改善のため、まず1日1000mlの水分をとることが目標だった。

プログラム導入の初日、スタッフから利用者さんに提案するが、初めはほとんどの利用者さんがあまり乗り気ではなく、平均500~600ml程度しか飲んで頂けなかった。

しかし、Aさんだけは唯一お1人だけ1000mlをしっかり飲まれた。

そしてその日の夕方、送迎が始まりひと気が少なくなった時、Aさんは突然椅子から立ち上がり、スタッフに向かって「これ畳んじゃっていいのかしら?」と近くの席にくしゃくしゃになっている使用済みのひざ掛けを手にとり、一枚一枚丁寧にピシッと畳まれた。

なんと、この言葉が私にとってAさんから聞く初めての言葉であった。

そして翌日、私は夢でも見ているのではないかと思う光景を目にした。

Aさんはぼやあ樹にいらしてすぐ、隣近所の利用者さんと楽しそうに会話をなさっていた。

スタッフ一同、「(Aさんは耳が遠いんじゃなかったんだ...)」と確信した。

ちなみに、この日も水分はきちんと1000ml飲まれた。

そしてプログラム開始から3日目の朝、さらに驚くことが私を待っていた。

朝の送迎時、Aさんのご自宅へ向かいに行った。
いつもなら布団で寝ているところを起こすのだが、この日はいつもいるはずの布団に姿がなく一瞬焦ってしまった。

すると突然、後ろのほうで物音がした。

ハッと振り向くと、そこには全身着替えを済ませて、ちょっと薄化粧をしたAさんが少し照れたように微笑んでいた。

私は思わず、Aさんを抱きしめようとするとAさんも手を広げて体を寄せてくれた。

この時私は、まるでAさんが"別の世界から帰って来てくれた"ように感じ、嬉しい気持ちが抑えきれなかった。

そして、ぼやあ樹でも元気に過ごされ、あっという間に帰りの送迎時間となった。

車に揺られ、Aさんの家に近づき見慣れた風景を見ると、『あぁもうじき家ね。今日もこれで終わったね』と少し寂しそうな表情を見せた。

そしてAさんの家へ到着すると、運転手に向かって『ありがとうございました』と伝え、同乗していた利用者さんには『お先にー』と一言。

さらに、玄関の戸を開けると『ただいまー♪』と陽気に大きな声を出して、中へ入っていかれた。

現在Aさんは別の施設に移ったが、私にとっては【自立支援】というものを身をもって示してくれた、いわば恩人のような存在だと思っている。

たかが水分、されど水分。

現在のぼやあ樹では、半数以上の方が1000ml以上水分を飲まれ、徘徊や暴言、また細かな認知症状がみるみると改善されていき、元気な方々で溢れている。

利用者さん全員が"人生まんざらじゃなかったなぁ(笑)"って最後まで笑ってくれるのが私の願いです。

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